正しい夏の過ごし方 -Great Escape- (吉井浩平の散文その7)
夏真っ盛りである。僕のもっとも好きな季節。インドア派な自分は海へも山へも行かず、外へ出れば異常な暑さに辟易するばかりなのだが、僕は昔から夏が好きなのである。
ビーチ・ボーイズしかり、井上陽水しかり、スタンド・バイ・ミーしかり。
夏は、僕らを解放的にさせてくれるし、何かが起きる予感を感じさせてくれる。
もちろん、予感はあくまで予感であって、実際は何も起こらないことの方が多いし、学生時代などは、何も成し遂げられないままに夏休みの終わりを迎えて、一つの季節が終わる寂しさと溜まった提出物を前にした焦燥感だけが残った。
もっとも、何度かの夏は、予感を越えていくような素晴らしい季節を過ごしたと、ちゃんと言っておく。
こんな風に、夏という季節を、僕は他の季節より少し特別に捉えている。
Have a book tonight
8月の頭に、一泊二日で東京へ行った。おのぼりさんである。観光らしく東京スカイツリーに行ったりしたのだけど(人がいっぱいで登りはしなかった)、一番良かったのが浅草だった。初めて訪れた訳ではないけれど、ゆっくり過ごしたのは今回が初めてだった。
人力車が町中に走っていたり、力士の人がコンビニで買い物をしていたりする一方で、浅草寺とスカイツリーが一つの構図の中に共存していたり、街を歩いている人の外国人率の高さが、何処か近未来的で異世界を感じさせる空間だった。
完璧な夜の作り方
夜はBook and Bed Tokyoというホステルに泊まったのだが、これがまた良かった。
カプセルホテルのようでありながら、一面にサブカル系の本がたくさん並んであって、バーで飲み物を注文できたり、ソファやベッドで各々の時間を過ごすことが出来るのである。
従業員の人達の、お客さんとのちょっとしたコミュニケーションを大切にしているところがIrieな感じで素敵だったし、利用者の人達のリラックスした時間の過ごし方も本当に素敵だった。そこにいた人達の日常がどのようなものか、決して分かりはしないけれども、その日ホステルで過ごしていた時間はきっと、スペシャルだったはずだ。この人達はきっと、時間を楽しく使うプロなのかもしれないな。
僕も、赤塚不二夫について特集された本を見つけて楽しんだ。
こういう時間の過ごし方、いつの間にか忘れていたなぁと。煙草を吸いに出た真夜中の、昼間とは打って変わった静かな浅草で、そう思った。
東京のど真ん中の一室で、室内に流れるサンプリング・ミュージックも、無造作に並べられたノン・ジャンルな本の数々も、それらは誰の所有物でもない。
それらはしかるべきタイミングで、それを必要とする誰かのためにあって、出番が訪れたときに決定的な仕事をする。自分もそういう人間になりたいなあ。
明け方、少し早めに起床して、煙草を吸いに出た外の街はまだひっそりとしていて、誰のためのものでもない、僕の街だった。
浅草、次回はもっとゆっくり過ごしてみよう。
そして、また何処かの街のいつかの夜にBook and Bedを利用しよう。
2018年の夏はまだまだ
THE PYTHONS NightVol.5 -Blues Live & Session-
2018.8.18(Sat.)神戸acoz
Open/18:30 Start/19:30
1st Stage - THE PYTHONS Live
2nd Stage - Jam Session Time(With THE PYTHONS)
Special Guest - 木寺”ぱやし”聖子
Charge/1500yen(1drink付き)